看板立案講座

看板製作の仕事43年で考えた事

はじめに

これはセンスの良い素敵なカッコ良いデザインの看板を創る為の話では、ありません。あなたが看板が欲しいなァと思った時、そこには期待する状態や目標・目的があると思います。
その目標・目的を達成する為の話です。

「立案講座」 といっても、わたしは先生とか講師などと名乗れるほどの者ではありません。看板製作の仕事30年の間、多くのお客様と接して肌で感じた事をまとめたものですので、お気軽にお読みください。

あなたが看板を発注するときのヒントに成れたら幸せです。

看板の必要性

あるレストランチェーンの社長さんと、社長さんの経営するレストランで一緒に食事をしていた時の話です。

夜だったのですが、お客さんが店員に「看板の電気が付いてませんよ」と言ったのを聞いた時、社長さんが、私に言った一言、「良いサービスと良い商品があれば隠れていても、看板が無くても、お客さんは、お店を探してまでもやって来るんだよ。また、それぐらいの商品力を持たないとね」

確かに、そのお店は看板の電気が消えていてもお店は、満席、入口には沢山の人が、列を作っていました。

教訓-「看板の前に、まずは良い商品とサービスづくり」

それでは看板の役割とは?

お客様への <やさしさ>? 価値ある商品と、サービスを早く的確に多くのお客さんに伝えること。しかし〈 やさしさ 〉で、お金を使って看板は作りませんね。商売は慈善事業でないんですから。

本来の看板の使命は、あなたの商品やサービス・技術をお客様に販売する手助けです。

そのために、あなたを知ってもらい→信用してもらい→商品を知ってもらい→最終目的である、お客様に商品を買ってもらう。これが、看板の使命です。

古典的ですが広告機能の法則でアイドマの法則というものがあります。

A(AttentIon アテンション・注意)→ I ( Interest インタレスト・興味 )→ D (Desireデザイア ・欲求 )→ M(Memory メモリー・覚えている事) → A( Action アクション・行動 )行動つまり購買行動という結果を生まない看板は失敗です。

それでは看板製作で考慮すべき絶対条件を四つに絞る

・宣伝目的に適する事
・お客様の欲求や感情に訴える看板である事
・経済的である事 ( 看板製作費用と期待する結果の予測との関係 )
・お客様に肯定される (同調される)内容である事

目標・目的を絞る ( ビジネスチャンス )

つい最近、顔黒とか、底厚靴とか、キックボードとか流行りましたが、その原因と理由となると私の感性とリサーチ力では、理解できませんが、きっと、そこには、何らかのキッカケとか要因があったわけです。
確かな事は、今の若者の文化(欲求・行動・感性)と商品やスタイルのもつ要素の一部が重なり合ったと言う事ではないでしょうか。

あなたが、どんなに素晴らしい技術や商品・サービスを持っていても、お客さんの文化との重なり合いが、無かったら〈宝の持ち腐れ〉です。
素晴らしい職人が造った物でも使う人がいなければ始まりません。お客様あっての商売ですから。

まず 現状での重なり合う部分の確認と自覚が一番大切です。
チャンス(重なり合い)を見つけチャンスに全資源を投入すれば、道が開けると思います。

目標・目的を自覚・確認できれば進む方向も、自ずと決まります。

お客様の文化(欲求・感性・行動)とあなたの商品・サービスの重なり=ビジネスチャンスを探す方法で、本格的なものは、CI計画(コーポレート・アイデンティティ)の自己確認のための調査(学者インタビュー・イメージ調査・生活者の動向・消費ニーズ動向調査)が、あります。

ここでは上記 「看板の必要性 」の絶対条件の 「 3.経済性 」に従い、
以下の型で、自問自答して考えて見てください。

1.あなたの商品・サービスは、お客様のどんな生活に役立ちますか?

〈合理的でムダのない生活〉・〈豊かで便利な生活〉・〈主体的で自由な生活〉・〈個性のある生活〉・〈自己変身、自己創造目指す生活〉・〈職業能力向上〉・〈楽しい暮らし〉・〈安定し不安のない生活〉・〈夢のある暮らし〉

2.お客様の(あなたの商品・サービスを)購入時の動機イメージ

〈衝動的 〉・〈近所だから〉・〈ブランド性〉・〈あなたの信用性〉・〈品質や機能〉・〈現時点の満足の為〉・〈将来のため〉・〈お客様自身の目で決める〉・〈他人の目を気にしながら〉・〈支払いやその他のリスクを感じながら〉・〈価格〉・〈デザイン的イメージ〉・〈笑顔で〉・〈しぶしぶ〉・〈希望に満ちて〉

ほんの一例をあげましたが、充分でないと思います。
それぞれ、お客様との接点を探し、あなたの商品・サービスの価値と役割の自覚と確認をしましょう。

イメージを決める (デザインコンセプト)

下記の言葉の中で、前項の「重なり合い」をお客様に知らせ伝えるのに適していると思われる言葉・イメージがありましたら書留めて見て下さい。

アクティブ・あざやかな・味わい深い・甘い・甘ずっぱい・安全・粋な・ういういしい・うららかな・うれしい・エスニック・エレガント・円熟した・美味しい・おおらかな・奥ゆかしい・厳かな・おだやかな・おちついた・おとなしい・おめでたい・温雅な・開放的・格調のある・カジュアル・がっしりした・活動的な・家庭的な・辛い・華麗な・枯れた・可憐な・簡素・かわいい・かわいた・甘美な・気軽な・貴重な・強烈な・清らかな・クラシックな・クリアな・気高い・権威的な・健康な・堅実な・高雅な・豪華な・高尚な・行動的な・香ばしい・合理的な・ゴージャスな・こっけいな・凝った・古典的な・子供らしい・さっぱりした・さわやかな・塩辛い・刺激的な・静かな・自然な・親しみやすい・シックな・しっとりした・渋い・実用的な・しとやかな・地味な・湿っぽい・シャープな・しゃれた・重厚な・充実した・趣味的な・純粋な・情緒的な・上品・丈夫な・新鮮な・シンプルな・進歩的な・崇高な・すっぱい・すばやい・スピーディな・スポーティな・スマートな・正式な・精かんな・清潔な・成熟した・青春・清楚な・ぜいたくな・精密な・清麗な・繊細な・鮮烈な・洗練された・荘厳な・装飾的な・素朴な・大胆な・ダイナミックな・たくましい・楽しい・たわわな・ダンディな・丹念な・淡白な・緻密な・土くさい・艶っぽい・つややかな・田園的な・伝統的な・尊い・都会的な・どっしりした・ドレッシーな・トロピカルな・なじみやすい・ナチュラルな・なつかしい・なめらかな・苦い・にぎやかな・柔和な・ぬれた・ノーブルな・のどかな・のびのびした・爆発的な・激しい・肌ざわりの良い・派手な・華やかな・はれやかな・微妙な・フェミニンな・フォーマルな・複雑な・不思議な・プリティな・文化的な・ほがらかな・保守的な・真新しい・マイルドな・真面目な・まぶしい・まろやかな・みずみずしい・メカニックな・メルヘンの・モダンな・やさしい・やすらかな・野生的な・柔らかい・優雅な・幽玄な・雄大な・愉快な・豊かな・洋風の・冷静・力動的な・理知的な・りりしい・冷静な・ロマンチックな・ワイルドな・若々・和風の

( 日本カラーデザイン研究所データーベースより抜粋)

なんとなく、イメージが固まってきたでしょうか?
むずかしい事は考えないで、上記から抽出した言葉をそのまま、あなたのデザインコンセプトと、考えましょう。

看板原稿を作る

あなたのお店や工場・技術・商品・サービスは、誰のものですか?

本心( お金儲けが、したい!? )は、ともかくとして、
「すべて、お客様のもの」と、考えたら どうでしょうか?

あくまでも、お客様の立場にたった原稿作りに心がけること。

ここでの注意点は、やはり、絞る事です。
宣伝したい事・売りたいもの・伝えたい事は、山ほどあるでしょう。

看板での宣伝は、ヒソヒソ話で、言葉を伝えていく 「伝言ゲーム」に、似ているように思います。
言葉( 情報量 )は、少なければ少ないほど、正確に伝わります。

看板を見た人に認知され、印象に残り、記憶される看板にしたいものです。

情報量の多すぎる看板をよく目にします。
車で走っている時などは特に、何の看板だったか解かりません。

とにかく簡素化する事が絶対条件です。
一枚の看板に限らず、店舗全体でも同じ事がいえます。

最初は一枚の看板だけだったのでしょうが、思いつくまま看板の付けられそうな所、いたるところ、すべてに看板をつけて、看板だらけの店舗を良く見ます。喜んでいるのは看板屋さんだけ!?

街の美化を壊すだけでなく、お店のイメージダウンです。
「4..お客様に肯定される」に違反します。

ここで原稿をつくる際、考慮したい項目をあげてみましょう。

可視性・・・・・見やすさ。注目度があること
可読性・・・・・読みやすい事。理解度が早い事
造型性・・・・・デザイン性。統一性と変化がある事 (バランス・リズム・ハーモニー)
独創性・・・・・個性的である事
暗示性・象徴性・・・・・内容を暗示させたり象徴するもの
親近性・・・・・親しみやすいく、肯定されること

そのためには、色彩計画とかネーミング・キャッチコピー・ロゴ・キャラクターなどありますが、それは、予算が許すなら専門家にお任せする事にして、実際的には、あまり凝りすぎず、お客様の立場に立って、伝えたい内容を直接的な言葉で理解しやすい言葉を使ったほうが効果的です。

看板で一番大切な個所は、余白

最後に、わたしが実際の看板の仕事で、いつも直面する問題でが、・・・・

看板を依頼して頂く、お客様は、
すべてを目立たせたくて 「全て、大きく書いてください」と注文します。
又、余白のあるデザインを作ると 「 もったいない 」といいます。

看板は、余白が一番大切で 、見やすさ・美しさの絶対条件です。

構成は極端過ぎる位の大・中・小の文字の変化が効果的です。
絵画の風景画の構図と同じで、前景・中景・背景がある事により、立体的な実際の風景以上の美しさを表現出来るのです。